キャビティリングダウン分光法に基づく小型微量水分センサの開発

標準供給(産総研)

産総研(NMIJ)の研究チームが発表した、キャビティリングダウン分光法(CRDS)に基づく小型微量水分センサの開発に関する論文の内容を紹介します

論文情報

タイトル: A miniaturized trace-moisture sensor based on cavity ring-down spectroscopy

著者: H. Abe, K. Hashiguchi, D. Lisak, S. Honda, T. Miyake, H. Shimizu

掲載誌: Sensors and Actuators A: Physical, Volume 320, 112559

発行日: 2021年4月1日

DOI: https://doi.org/10.1016/j.sna.2021.112559

研究の目的

本研究の目的は、半導体製造プロセスにおいて要求される 10 nmol/mol (10 ppb) レベルの微量水分をリアルタイムで測定可能な、小型かつ軽量なCRDSセンサを開発することです
。従来のCRDS装置は高い感度と「校正不要」という利点を持つ一方で、装置が大型で重いという欠点があり、インラインでのプロセス監視における柔軟性が制限されていました 。

実験装置の構成(mini-CRDS)

開発された小型センサ(mini-CRDS)は、可搬性を考慮してアルミニウム製のブレッドボード上に構築されています

物理的仕様:

  • 外形寸法:24 cm x 9 cm x 13 cm
  • 質量:2.7 kg
  • キャビティ長(ミラー間距離):5 cm
  • 内部容積:約 4 cm^3

光学設計: システムの小型化のため、以下の最小限の光学部品によるシンプルな設計が採用されました

  1. モードマッチングレンズ 1枚
  2. 高反射(HR)ミラー 1対
  3. 集光レンズ 1枚

光源: 波長 1393 nm の分布帰還型(DFB)レーザーを使用しています

性能評価の結果

開発されたセンサの基本性能および測定精度は、日本計量標準総合センター(NMIJ)が確立した国家標準(微量水分一次標準)との比較によって評価されました

  • 検出限界: 窒素(N2)中の水分において、モル分率で 3.1 nmol/mol (3.1 ppb) を達成しました 。
  • 測定範囲と不確かさ: 12 nmol/mol から 1.3 micro-mol/mol の範囲において、相対標準不確かさは 10% から 0.67% と評価されました 。
  • 安定性: アラン・ウェルレ偏差(Allan-Werle deviation)は、平均化時間 10 秒において約 0.46 nmol/mol でした 。
  • 光学性能: 平均化時間 10 秒における最小検出吸収係数(MDAC)は 6.8 x 10^-10 cm^-1 でした 。

結論

本研究により、キャビティ長を 5 cm まで短縮しながらも、半導体産業で必要とされる 10 ppb レベルの微量水分を十分に測定可能な性能を持つ小型CRDSセンサの実現が示されました 。この小型化(従来の据置型装置と比較して体積で5倍以上、質量で4倍以上の削減)は、産業界におけるインライン監視や、将来の惑星表面探査(月面での水探索など)への応用を可能にするものと結論づけられています 。

本内容は、紹介した論文 に記載されたデータおよび記述に基づいています。