CRDS(キャビティリングダウン分光法)方式レーザー水分計は、ppb・pptレベルの超微量水分測定を可能にする最新鋭の光学式水分計です。その画期的な測定原理から、従来の基準器であった鏡面式露点計との違い、現場でのメリット・デメリットまで詳しく説明します。
CRDS方式の測定原理:キャビティリングダウン分光法とは
CRDS方式レーザー水分計の最大の特徴は、キャビティ(測定セル)内でのレーザー光の挙動を利用した計算手法にあります。
数千回の往復による「長い実効光路長」
キャビティ内に導入されたレーザー光線は、水分子の吸収断面積をカバーしながら、セル内を数千回も繰り返し往復反射します。これにより、コンパクトな装置でありながら「実効光路長(光が通る距離)」が非常に長くなり、ごくわずかな水分子も逃さず捉えることができます。
レーザー光の減衰時間で水分量を算出
水分量の計算は、レーザーを遮断した後に光が消えるまでの「減衰時間」を測定することで行われます。光学的な減衰時間を直接カウントするため、従来のセンサーのような物理現象や化学反応を介する方式に比べ、極めて高い精度を誇ります。
CRDS方式水分計の主なメリット
最新の光学技術により、従来の水分計では困難だった「速度」と「精度」の両立を実現しています。
ppb・pptレベルの超高感度と迅速な検出
実効光路長が極めて長いため、ppb(10億分の1)レベルの水分検出を迅速に行うことができ、感度はppt(1兆分の1)レベルにまで達します。
仮想環境による「任意のゼロ点補正」
CRDS方式は、導入するレーザーの周波数を「水分子の吸収がない波長」に切り替えることで、物理的に水分を除去することなく、仮想的にキャビティ内を水分ゼロの状態にできます。これにより、現場でいつでも任意のタイミングでゼロ点補正を行うことが可能です。
鏡面式(ミラー式)露点計との違いと信頼性
これまで、露点・水分測定の基準器としては鏡面式(ミラー式)露点計が必須とされてきました。しかし、近年その勢力図が変わりつつあります。
なぜCRDSが各国の標準器として選ばれるのか
精度・再現性・応答性の総合的な判断から、現在では各国の標準ガスチームにおいて、水分発生装置の性能比較用機器としてCRDS方式が選定されています。
微量水分領域における「応答性」の重要性
鏡面式も非常に優れた原理ですが、微量水分領域においては「応答速度」に課題があります。測定結果の信頼性は応答速度に大きく左右されるため、特に超低水分領域の測定においては、CRDS方式のほうが鏡面式よりも優れていると認知されています。
CRDS方式レーザー水分計の特性一覧
導入を検討する際に重要な、具体的な性能特性をまとめました。
| 項目 | 評価 | 備考 |
| 精度 | ◎ | 極めて高い測定精度を維持 |
| 応答性 | ◎ | 瞬時の測定が可能(微量水分に強い) |
| 再現性 | ◎ | 安定した測定結果を提供 |
| 耐腐食性 | ◎ | ミラーは酸化膜コーティング。HCl等の腐食性ガスにも対応 |
| 測定ガス | ◎ | ガスファクターの作成が可能(一部フロンガスを除く※) |
| ランニングコスト | 〇 | 内部補償機能により維持管理が容易 |
| 耐圧力性能 | △ | 測定窓のガラス強度に依存 |
| コスト | × | レーザー等の高額部品を使用するため初期費用が高い |
| 耐コンタミ性 | × | 高感度ゆえにガスの汚染には非常に敏感 |
