半導体デバイスの超微細化に伴い、製造プロセスで使用される工業用ガスの高純度化(ppbレベルの水分制御)は避けて通れない課題です 。産総研(AIST/NMIJ)は、このニーズに応えるため、一次標準としては世界初となる「拡散管方式」を用いた微量水分領域の湿度標準を開発しました 。
なぜ「拡散管方式」なのか?(霜点発生方式との違い)
世界の多くの標準研究機関では、低温の氷で飽和蒸気を作る「霜点発生方式」が主流です 。しかし、産総研はあえて異なる「拡散管方式」を採用しました 。
国際単位系(SI)へのより明確なトレーサビリティ
- 霜点発生方式: 氷の温度測定と「蒸気圧式(計算式)」を用いて湿度を決定します 。
- 拡散管方式: 水分蒸発による「質量の変化」と、乾燥気体の「流量」を直接測定して決定します 。
計算式に頼らず、質量(kg)や流量といった物理量を直接測定するこの手法は、SIへのトレーサビリティがより明確であるという大きな利点があります 。
精度を極限まで高める3つの基幹技術
1億分の1(10 nmol/mol)付近のきわめて乾燥した状態を正確に作り出すため、装置には特殊な技術が投入されています 。
- 磁気吊下天秤: 拡散管セルの微小な質量変化を、非接触(磁気)かつ高精度に測定します 。
- 臨界ノズル(音速ノズル)式流量計: 乾燥気体の流量を、極めて高い精度で制御・測定します 。
- キャビティリングダウン分光法(CRDS): 発生した湿度の安定性と、設定値を変化させた際の応答性をリアルタイムで監視するために採用されています 。
世界トップレベルの安定性と応答性
開発された装置は、10 nmol/mol(霜点にして約-100°C)付近において、極めて優れた安定性と応答性を確認しています 。
- 低露点への対応: 従来の方式では困難だった微量領域において、世界トップレベルの標準値を実現しました 。
- 供給体制の確立: 2007年5月より、この装置を用いた依頼試験(校正サービス)が開始されています 。
まとめ:高精度測定が産業を支える
産総研が開発した拡散管方式の湿度標準は、単なる研究成果に留まりません。製品製造や科学分野における微量水分計測の信頼性を底上げし、日本のモノづくりの競争力を支えるインフラとして機能しています 。
産総研 TODAY Vol.7(2007)
産総研TODAY
拡散管方式による微笑水分発生装置開発に関する資料となります。
